ご存知でしょうか?
御影にあるにしむら珈琲の最上階には、素敵なサロンがございます。
この素敵なサロンで、美味しいケーキセットをご堪能いただきながら、フランス音楽というおしゃれそうで実は変わり種の音楽をお楽しみいただく企画が、以前少しご紹介したこちらの演奏会でございます。
2018.10/20(土)
13:45開場 / 14:00開演
にしむら珈琲3F フレンドサロン
MY-Duoでお届けする二回目の演奏会ですね。
連弾、ソロ、連弾の三部構成で、近代フランス音楽を堪能できるプログラムでございます。
ざっくり紹介いたしますね。
………♪……♪……♪………
Ⅰクロード・ドビュッシー
『小組曲』
1.小舟にて 2.行列 3.メヌエット 4.バレエ
……………
あまりにも有名な連弾組曲。解説をするのも弾くのも恥ずかしいくらいです。
しかしもちろん、この大御所をはずせるわけもなく。
ということでですね、ぜひさらりと聴き流して……え、だめ?
仕方ないですね。
………………
♪小組曲
さて、ドビュッシーは目に見えない思想や感情を表現した象徴主義の文壇、ボードレールやヴェルレーヌからの影響を濃く受けています。
この『小組曲』1.小舟にて、2.行列のタイトルは、ヴェルレーヌの詩集『艶やかなる宴』から採られています。
この詩集のなかの「幻想」という表現に、太陽王ルイ14世の頃、フランスバロック時代を見て、3.メヌエット、4.バレエが作曲されたと言われています。
ちなみに、3.メヌエットには、ドビュッシーがバンヴィルの詩に作曲した歌曲『艶なる宴』の旋律も使われています。
初期に作曲された作品で、まだドビュッシーらしさは控えめなのですが、伝統的な作風の中に、管弦楽的な響き、独特の旋律と色彩がきらめいています。
※よくドビュッシーの音楽を印象主義と言うのですが、象徴主義と混乱していると思われます。
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Ⅱモーリス・ラヴェル
亡き王女のためのパヴァーヌ
古風なメヌエット
……………
お口直しのソロですが、曲目は濃いですね。
ラヴェルの描く音は非常に色彩豊かで、それはもう「管弦楽の魔術師」と称されるだけあります。
そして、ピアノ曲にも管弦楽の色があるため、聴くほど易しい曲ではなく、奏者泣かせの難曲も多いです。
フォーレに作曲を学び、ドビュッシーを尊敬していたラヴェル。
前衛的な音楽のようでありながら、ロマン派や古典派の音楽からもエッセンスを取り入れています。
ユーモアがあり、洒落ていて、洗練されている、フランス音楽らしい音楽を構成しました。
………………
♪亡き王女のためのパヴァーヌ
きらきらとした木漏れ日につつまれているかのような景色で、美しい曲ですね。
タイトルはことばの響きでつけたそうですが、フランス語に明るくないのでその言葉遊びが分かりません。残念です。
ラヴェルはひねくれものでしたから、作曲当時、この曲を評価していなかったようですね。
しかし、後に自ら管弦楽へと編曲しました。きっとそれが答えです。
………………
♪古風なメヌエット
ラヴェルの初出版作品。
伝統的なメヌエットの形式に則ってABAの造りですが、ぶつかる和音が多く、古風な印象はありません。
分析すると非常に面白いのですが(長くなるので割愛します)、とにかく弾きにくいの一言につきます。
是非楽譜を一度ご覧ください。
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Ⅲエリック・サティ
『梨の形をした3つの小品 』
始め方, 同じものの延長, Ⅰ, Ⅱ, Ⅲ, 付け加えて, 言い直し
……………
「音楽界の異端児」、サティ。
詩人のコクトーや画家のピカソと交流がありました。
その頃の芸術運動には、ひとつのものを様々な角度から表現するキュビズムや既成の秩序への反抗であるダダイズム。文学運動から絵画にも広がった超現実を描くシュルレアリスム。
並行して、目に見えるものを美しく捉えた印象主義から、内面を捉える象徴主義が生まれ、古典への回帰である新古典主義の流れが再び出現ました。
様々な芸術運動の渦中にいたサティ。時に彼は新古典主義であると言われますが、あまり真面目ではなく、パロディのように自在に扱っていました。
また、フランス音楽界ではワーグナーの音楽を支持する動きと、フランス古典音楽にロマン派のエッセンスを加え新しい音楽を目指す動きがありました。
しかし、サティは中世の神秘主義を愛し、由緒あるパリ音楽院の「つまらない授業」を抜け出してはグレゴリオ聖歌を研究しました。
また、文学カフェ「シャノワール」でシャンソン等の伴奏をし、様々な民族音楽に触れ、秘密結社「薔薇十字教団」で作曲をしました。
こうして並べると、ふらふらしているだけに見えますが、彼は独自のアイデアによって新しい音楽世界をつくりあげた革命的な音楽家です。
時代の先を行きすぎて、彼を最初から理解し、評価した音楽家は友好関係にあったドビュッシーや、まだ若かったラヴェルくらいでした。
「フランス6人組」としてコクトーに勝手に宣伝されるようになると、知名度があがりますが、やがて6人組は自然消滅をします。
仲良し6人組ではあっても、別個の音楽世界があったのですね。
「6人組はなくなった。独立した6人の音楽家が残った」とサティは語っています。
自分の音楽を「家具の音楽」すなわちBGMと公言し、「静かに聴くな」と怒ったこともあるサティ。
多くの音楽家に大きな影響を与えましたが、彼は、彼を支持する作曲家たちに向かって「ひとりで歩け、私とは反対のことをやるのだ。誰の言うことも聞いてはいけない」ということばをのこしています。
「誰の言うことも聞いてはいけない」
これがサティの本質のように感じます。
彼が構成したのは、音楽なのか、文学なのか。もしくは絵画であるのか。
変わった表題や、隙間に書き込まれるテキスト。
イラストレーションのような自筆譜。
「エリック・サティ」というひとつのジャンルをつくりあげたと言っても過言ではないでしょう。
彼の音楽はクラシック音楽だけでなく、ポピュラー音楽、前衛音楽にも影響を与え、ケージの「4分33秒(演奏者が奏でない無音の音楽)」にも繋がります。
そのケージは、演奏会でサティの「いやがらせ(ヴェクサシオン)」を世界ではじめて、指示どおりに840回繰り返しをして演奏した演奏家でもあります。
演奏時間は、なんと18時間……。
………………
♪梨の形をした3つの小品
こちら、美味しそうなタイトルですが、梨は頭でっかちの阿呆という揶揄でもあります。
しかも、ドビュッシーの「君もそろそろ形式というものにこだわるべきだ」という助言に従って意気揚々と作曲したらしいのがこの曲。
3つの小品といいつつ外側にふたつずつも曲があるし、タイトルもなかなか。
けれども確かに、小節はあるし、調性もあるし、なにより形式があるのです。
「ほらできたぞ」と披露しにこられたドビュッシーはさぞや驚いたことでしょう。
とんだお茶目さんですね。
そんな梨の中心部、Ⅰ, Ⅱ, Ⅲは続けて演奏いたします。どうぞ美味しく召し上がれ。
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